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「人間は成長しなくてはいけない」という神話とセルフ・コンパッション

「人間は成長しなくてはいけない」という神話とセルフ・コンパッション

<2018.9.11>

生きづらさに投稿して下さっている方の投稿を読んで感じることは、みんな、なんて自分に厳しいのだろうかということだ。

理想の人物像があって、その形に自分を一生懸命当てはめようとしている。
。合わない形に合わせようと、無理やり身体を捻じ曲げたり、いらない部分を切り取ろうとしたり、必要な部分をどこからかもってこようとする。

痛々しいまでに、理想の自分になろうとして、努力する。
目標を掲げて、理想の自分、昨日よりもよい自分であろうとするのは素晴らしいことだ。それを否定するわけではない。

だけど、「人間は成長しなくてはいけない」「理想的な自分であらねばならない」という神話が、一人歩きしている気がするのだ。
「人間は成長しなくてはいけない」が行き過ぎて、限界まで消耗しないと頑張ったと思えなくなっているような気がして、切ない。

理想的ではない自分を全否定するとき、それは生きる力を奪うものにもなる。
何かに影響を受けて自然に変わっていくのではなく、無理やり自分を作り替えようとする行為は、とてつもなく苦しい。

「これではダメ」「この自分ではダメ」「もっとこうしないと」「もっと、こういう自分にならないと」そういう声が絶えず聞こえているのではないかと思う。
生きづらさに悩む人の多くは、多分に内罰的だ。失敗したときと思うとき、限界まで努力できなかった思うとき、自分を攻撃して、自らを責める。そして抑うつ状態に悩む。

でも「人間は成長しなくてはいけない」というのは、成長の過程で身に着けてきた思考の癖の一つに過ぎない。

失敗したり、理想の自分とかけ離れていても、自分を責めない人も多くいる。
ダメな自分を受け入れて、「仕方ないや」と飄々と、楽しそうに生きている。

私も以前は、ダメな自分を受け入れることができなかった。今思えば、自分に対する期待値がとても高かったのだと思う。
でも苦しかったから、楽に生きられる方法を色々探してみた。考え方はすぐには変わらないから、少しずつ少しずつ、受け入れられそうな物語を探した。

例えば、自分という枠組を外して、もっと別な視点から自分を捉えるというやり方もある。
世界という大きな枠組みから見ると、一人の人間がよくなるかどうかというのは、取るに足らないことだ。自分にとってはとても大事なことでもあると同時に、世界規模で考えれば、小さなことでしかない。

限界まで消耗するまで頑張る必要なんか、どこにもない。もっと気楽に生きていい。
そんな風に、自分を責めない考え方に少しずつシフトすることで、今は大分楽に生きられるようになっている。

自分を責めて苦しそうに生きている人に「もっと楽に生きてもいいんだよ」と声をかけたことがあった。
返ってきた答えは、「それだと、堕落するような気がして」だった。

自分ではない誰かにはなれない。なることを実は誰も強要していない。それを強要しているのは、ただ自分だけだ。

自分を責めるのをやめたとき、エネルギーが戻ってくる。
自分をいじめることで失っていたエネルギーを使えるようになる。結果的に色んなことに挑戦できたりもする。

心理学の用語に、セルフ・コンパッション(self-compassion)という言葉がある。自分へのやさしさ、慈しみ、慈愛、思いやりということだ。セルフ・コンパッションが高くなると幸福感が増し、不安や抑うつを軽減するとも言われている。

親しい友人のように接するように優しく自分に向き合うとき、苦しいだけではない人生への道が広がる。
それが、ありのままに生きることを許すということではないだろうか。





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