生きづらい。
それでも生きていく

『他人を攻撃せずにはいられない人』感想

『他人を攻撃せずにはいられない人 』（片田珠美著 PHP新書）を読んだ。

「アマゾンの内容紹介より引用」
暴言を吐く、支配したがる、けなして自信を失わせる、優しいようで水面下で工作している、一見目立たない人を含めて、あなたの周りにはとんでもない人が隠れているかもしれない。
本書では、精神科医として「ターゲット」にされて、痛い目に遭った患者たちから聞いた、人を陥れる「攻撃欲の強い人」を事例で紹介。ターゲットの心をどんなふうに壊していくのか、その手法を取り上げて分析する。
「攻撃欲の強い人」とはどんな人か。多くの場合、攻撃される側は、ターゲットが抵抗できないが、それは一体なぜなのか。何のためにそんなことをするのか。結果どんな影響を及ぼすのか。はたして、攻撃欲の強い人と、どう向き合い対処すべきか。本書で明らかにする。
自分のために、人生を台無しにされないために――職場や家族に潜む「害になる人」の精神構造を知る! （引用終わり）

他人を攻撃せずにはいられない人 (PHP新書)

精神科医の視点から「攻撃欲の強い人」とはどういう人か、その心理メカニズムについて述べている。

ネタバレになるので、内容が知りたくない人は、以降は読まないでほしい。

攻撃欲の強い人とはどういう人か、ターゲットをどんな風に壊していくのか、ターゲットが抵抗できない理由は何なのか、何故攻撃や支配しようとするのか、ターゲットにどんな影響を及ぼすのかを詳細に分析した後、どんな風に対処したらよいのか、その具体的な方法を書いている。

攻撃欲のターゲットにされやすい人の気持ちをよく代弁してくれていて、溜飲が下がる。
読みながら何度もうなづいてしまう。

他人を攻撃する人は、「あなたのためを思って言っている」「あなたを助けたいからこそやっている」といった言葉で、攻撃欲や支配欲を覆い隠して、ただ"支配したい"という真の意図を見せないようにする。家族、恋人、友人など、愛情や友情で結ばれているはずという幻想の上に成り立っている関係では、真の意図が一層見えにくくなる。

善意の仮面をかぶった悪意が一番タチが悪い。攻撃欲の強い人が自分自身の悪意に気づいていない場合さえあるそうだ。

ターゲットは強い欲求不満を感じるが、直接対決することを恐れているので、自分の気持ちを抑圧するしかないが、そうすると心身に様々な弊害が出てしまう。

「他者の欲望」を満たそうとする人ほど泥沼になるそうで、自分がなく他人に依存し、他人の価値観で生きている私は、恰好のターゲットなのだと思う。

興味深かったのは、「ターゲットにされる側の責任」について言及しているところで、まさに自分に当てはまっていて耳が痛い。

「いい人ぶりたい、不和を避けたい、復讐が怖いといった理由で、攻撃欲の強い人の支配下にずっととどまっているのは、虚栄心、怠惰、恐怖で身動きがとれなくなっているというそしりを免れないだろう」ということだ。

実際対峙せずに、その攻撃をただずっと受け止めているのは、ターゲット側の責任と言えるだろう。
初めの何度かは仕方がないとしても、その行為を継続して許してしまうのは、被害者自身の弱さの表れだと思う。

支配下から逃れようとして行動を起こせば、自分も無傷ではいられないから、現状に甘んじる。

お局様の小言をかわそうとして何かを言えば、更なる悪い状況を招くかもしれない。

パワハラ上司と一緒に仕事をしたくないと思えば、会社を辞めなくてはならないかもしれない。

モラハラ母に口答えをすれば、経済的援助を失うかもしれない。

恋人の支配から逃げようとすれば、恋人自身を失うかもしれない。

夫のドメスティックバイオレンスをやめさせようとすれば、肉体的な被害を被るかもしれない。

リスクを取ってまで行動に起こそうとする人は、よほど勇気のある人だ。
そして勇気を振り絞って行った行動が、必ずしも攻撃欲の強い人に対抗する手段になりえなかったりする。

筆者は、勝とうとしたり、やり返したりすることは得策でないと述べている。

ではどうすればいいのか。

処方箋として、かわし方、逃げ方、自分の守り方について言及しているのだが、それまでの内容に比べると、ごく消極的な対処法で、やや肩透かしのように感じられる。
裏を返せば、攻撃欲の強い人に対する魔法のような対処法はないということだろう。

関わりあいにならないことが一番だと思うが、色々なしがらみで逃げられないなら、
攻撃欲の強い人と離れても生きていけるだけの力をつけ、いつでも関係を清算する覚悟を持って付き合うことが必要なのかと思う。