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中野信子氏の『サイコパス』を読むと、良心を持たない彼らがよくわかる
<2017.7.13>
『サイコパス』(文春新書・中野 信子 (著)を読んだ。
帯には、「最新「脳科学」が解き明かす「あの人」の裏の顔」と刺激的な文字が並ぶ。
この本に興味を持ったのは、書評に「勝組サイコパスと負組サイコパス」という観点から捉えているのが面白いと書かれていたことがきっかけだった。
サイコパスというと、一般に思い浮かぶのは、犯罪者、猟奇的殺人者、暴力的で反社会的な人間といったイメージだ。
けれど、安易に犯罪を犯して悪事が発覚しやすい「捕まりやすいサイコパス」だけではなく、他人をうまく利用して生き延び、容易に本性を見せない「捕まりにくいサイコパス」もいる。
つまり、前者が負け組サイコパス、後者が勝ち組サイコパスといういうわけだ。
勝ち組サイコパスは、企業のCEO、経営者、弁護士、外科医など、社会的が地位が高い成功者に多いのだという。
ある分析によれば、ケネディ大統領やビル・クリントンなど、歴代アメリカ大統領が、強いサイコパス特性を示しているとされ、あのマザー・テレサもそうだったのではないかとも言われているというから、驚く。
サイコパスは、他者の痛みを感じず、良心を持たない。
不安を感じないからこそ、リスクを恐れず、大胆な決断ができる。
ではなぜ、彼らが良心を持たないのかというと、脳の「扁桃体」と呼ばれる部分の活動が、一般の人と比べ低いのだそうだ。
恐怖や不安、動物が本来持っている基本的な情動の動きが弱い。また、物事を長期的な視野に立って計算したり、様々な衝動にブレーキをかけている「前頭前皮質」の活動も低い。
良心がブレーキとして動かないから、冷徹に合理的な手法を取れるというわけだ。
非サイコパスの人間から見るとサイコパスは厄介な存在だが、人類の中に一定の割合でサイコパスが含まれるのは、種の繁栄のために、その方が有利だったのではないかと、中野氏は推測する。
冷徹さや、冷静な判断を失ってはいけないような仕事は、サイコパスに向いている。いわば、サイコパスは必要悪ではないかとしているのだ。
ではサイコパスを見分ける方法はあるのだろうか。
彼らは、以下のような特徴を持つという。
・外見や語りが過剰に魅力的で、ナルシスティックである。
・恐怖や不安、緊張を感じにくく、大舞台でも堂々として見える。
・多くの人が倫理的な理由でためらいを感じたり危険に思ってやらなかったりすることも平然と行うため、挑戦的で、勇気があるように見える。
・お世辞がうまい人ころがしで、有力者を味方につけていたり、崇拝者のような取り巻きがいたりする。
・常習的にウソをつき、話を盛る。自分をよく見せようと、主張をコロコロ変える。
・ビッグマウスだが飽きっぽく、物事を継続したり、最後までやり遂げることは苦手。
・傲慢で尊大あり、批判されても折れない、懲りない。
・つきあう人間がしばしば変わり、つきあいがなくなった相手のことを悪く言う。
・人当たりはよいが、他者に対する共感性そのものが低い。
『サイコパス』中野 信子 (著) 文春新書から引用
全部当てはまらなくても、身近に思い当たる人がいる人も多いのではないだろうか。
それもそのはずで、おおよそ100人に1人くらいの割合で、サイコパスは存在するという。日本の人口、約1億2,700万人のうち約120万人はいる計算だ。決して少なくはない数字に思える。
私の知り合いにも、そうかなと思われる人物がいる。
社会的地位も高く、話術が巧みで、人を惹きつける魅力がある。行動は、大胆で積極的、何事に対しても恐れず挑戦的だ。
それだけを見れば素晴らしい人に見えるが、怒りによって人をコントロールしたり、支配と被支配の関係を作り出すのがうまい。
他者への情や共感性が欠落しているように見えることがあって、あまり関わりたくないと思っている。
知り合いや自分がサイコパスかどうかの判断は、本書にチェックリストがついている。あくまで推測にはなるが、やってみればおおよその判断はつきそうだ。
ママカ-ストのボス、ブラック企業の経営者、炎上ブロガー、サークルクラッシャーなど、身近にいるサイコパスについても書かれているので、よりサイコパスが捉えやすくなる。
サイコパス思考やふるまいは、サイコパス本人が、意思や努力で後天的に変えていくことはできないのだと、中野氏はいう。もともと持っていない良心を無理に植え付けることはできない。
それらを踏まえ、今後彼らとどうむきあっていくか、考える必要があるだろう。
サイコパス (文春新書)