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歯医者の待合室で過呼吸症候群の女性に遭遇した

歯医者の待合室で過呼吸症候群の女性に遭遇した

歯医者の待合室で順番を待っていたら、突然隣に座っていた若い女性が、座っていた長ソファの上に倒れ込んだ。
ひどく苦しそうに喘いでいる。

「大丈夫ですか?」と声を掛けると、苦しい息の中、「過呼吸だから」というか細い声が聞こえてきた。

慌てて、すぐに看護師さんを呼んだ。
「過呼吸発作は初めてですか」と看護師さんが声を掛けている。
どうやら初めてではないらしい。先生も出てきて「大丈夫ですか。命に係わるものではありません。ゆっくり呼吸して下さい」という声が聞こえてくる。

邪魔にならない少し離れたところに座る。
予約制の歯医者の待合室に人は殆どいない。

過呼吸症候群は、不安、恐怖、緊張などの精神的ストレスをきっかけとして、酸素と二酸化炭素のバランスが崩れて、呼吸がうまくできなくなることで起こる。
呼吸が非常に荒くなって、手足の指先や唇に痺れを覚えたり、身動きができなくなったり、ひどくなると失神したりもする。

倒れた女性も、長ソファの上で身動きが取れないまま、苦しみに耐えている。どうすることもできない。

診察の番が来て名前を呼ばれたので、診察室に入る。

息を吸っても吸っても苦しいために本人は、「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖に襲われるそうだが、一般的には時間を置けば症状は治まっていく。

中学校のとき仲の良かった友達のことが思い出された。

体育館で学年集会か何かが行われていたときだったと思う。
友達が突然に床に倒れた。私を含めたクラスの皆が驚いて、友達の周りを取り囲む。

過呼吸を目の当たりにしたときは、この時が初めてで、友達が何か恐ろしい病気にかかったと思えて、恐ろしかった。

別のクラスの先生が紙袋を探して来て、彼女に口元にあてる。(ちなみにこの紙袋等を口元に当て、吐いた空気を再度吸い込むというペーパーバッグ法は、二酸化炭素が過剰に増え過ぎ、酸素が不足してしむので、今は危険とされているそうだ。)

慌てるでもなく近寄ってきた担任の女教師が、身をよじって苦しむ友達を少し屈んで一瞥する。
「この子はこういう子だから」とばつが悪そうに、周囲の先生に話している。友達を心配している風はない。

私が目にしたのは初めてだったが、担任の落ち着きぶりから、これが最初の発作ではないことが見て取れた。多分部活や違う場面で発作は起きていて、それは担任も知るところだったのだろう。

私はこの担任が嫌いだった。過呼吸を起こした友達も嫌っていた。

平然と差別をし、気にいらない生徒をホームルームでつるし上げ、教育や指導という名目で、クラスを力でコントロールし支配した。
担任の考えるよい生徒以外は、徹底的に個人攻撃されたから、生徒は皆、担任の価値観に沿う子供に変わるしかなかった。皆、恐怖政治の下で担任のミニチュアと化していく。

担任の好みに叶う生徒を演じきれない私や、過呼吸に陥ってしまう友達は、クラスでもちょっと浮いていた。
そんな中、友達は過呼吸を起こすようになる。学校も不登校気味になった。

彼女がメンタル面でひどいダメージを受けているのを、それを招いたのは自分であるこことも担任は知っていたはずだが、担任のクラスに対する対応は変わることはなかった。気に入らない生徒への弾圧は続いた。

それまでも学校や教師に対していいイメージを持っていなかったが、この女教師が担任になって、学校や教師に対する不信感は徹底的なものになった。

3年になって担任が変わったとき、心底ほっとした。
過剰なストレスから解放され、友達の表情も明るくなった。多分、私も同じだっただろう。

高校は別の学校だったからその頃のことはわからないが、少なくても中学3年の年には、友達が過呼吸を起こすことはなかったように記憶している。
今は家庭を持って、たまに会うと落ち着いて幸せそうにしている。

「あんたたち、今は厳しいと思うかもしれないけど、このクラスでよかったって絶対思うから。クラス会もどこにいたって皆集まるし、どこにも負けない絆があるんだから」
担任は、クラスの生徒に向かって、よくそんなことを言っていた。

けれど、私はクラス会なんていまだに出たくもないし、あのクラスがよかったなんて微塵も思えない。
過呼吸だった友達も同じような感想を持っている。そして、別な友達から聞いた話だと、そう思っている人が少なからずいるようなのだ。順応しているように見えた皆も、内実はそうでもなかったのかもしれない。

一つの価値しか認めない閉塞感を忘れることができない。

治療が終わって待合室に戻っても、先ほどの若い女性は、長ソファに横たわったまま、まだ起き上がれないでいた。
若い女性に、友達の姿が重なる。

「過呼吸、早くよくなるといいね」
心の中で彼女に向かって、そんなことをつぶやいた。

(この中学の頃の話は別記事にも書いています。「過去のいじめ…中学校の頃」)




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