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気分と一致する情報に目を向けやすい「気分一致効果」
<2018.11.15>
最近、「気分一致効果」という言葉を知った。
心理学者のバウアーが提唱したもので、いい気分のときにポジティブな記憶が想起されやすくなり、悪い気分のときには、それに応じたネガティブな記憶が想起されやすくなるというものだ。
人はそのときの気分と一致する情報に目を向けやすいものらしい。
怒りや悲しみの感情にいるときは、怒りや悲しい記憶にアクセスしやすくなっているし、逆に楽しい気分のときには、その感情に一致する楽しい記憶にアクセスしやすくなる。
記憶にアクセスするだけではなくて、それを使って判断や評価や、未来予測も行う。
雨が好きな人も中にはいるけれど、大抵の人は雨が降っていれば晴れた日よりは気分が塞ぐし、考えることも少し暗くなりがちだ。
抑うつ状態で苦しかったときに、このことを知っていたならと思う。
当時すごく苦しかったのは、自責や自己否定感などのネガティブな感情に囚われていて、それがネガティブな記憶を呼び起こし、更なるネガティブな状態に陥るという悪循環を繰り返していたからだったと思う。
人生は辛いことに満ち溢れているように感じていたけれど、自分が辛くなる方に注意を向けていたのだ。
そこから抜け出したいと切実に思っているのに、実際やっていたことは、自分にとって辛い回路をせっせと活性化することだった。
自分のダメさ加減が許せなくて、上司が不機嫌そうにしているのも自分が何かしたからではないかとか、また私は仕事で失敗するだろうとか、…事実かどうかわからないのに、先回りして予測して、疲弊していた。
「引き寄せの法則」にも通じるものがあるなぁと思う。「引き寄せの法則」は、簡単に言うと、感じている感情に呼応した現実が引き寄せられてくるというものだ。
実際は、人生にはいいことも悪いことも起きる。(この場合のいい悪いは、あくまで自分にとってはという意味だけど)いいことも悪いことも起きているのだけど、認知がネガティブな方に大きく偏っていれば、楽しいことなんて何もないように感じられるし、逆にポジティブに偏っていれば、楽しいことばかりのように感じられるだろう。
「引き寄せの法則」というより、出来事をプラスとマイナスのどちら側から見て、それを拾うか(認識するか)っていうことのように思える。
どちらかに偏っているときは、もう片方が見えにくくなるから、それがないこと(少ないこと)のように思えるだけじゃないのか。ネガティブな状態にあるからネガティブなことを引き寄せていると思っていても、実は、単にネガティブなものしか見えなくなっているだけではないのか。
ただ、ネガティブな感情は、慎重さをを伴うものでもあるから、一概に悪いものとは言えないと思う。
私たちは、プラスとマイナスの両面を持って生きている。あまりにもポジティブな人は、私には一種近寄りがたく思えたりもする。
ただ、うつになったり心の健康を損なうところまでいけば、それは明らかにネガティブに偏りすぎている。
「引き寄せの法則」では、自分がどういう気分でいるかは大切なことだと言われている。それは「気分一致効果」でも一緒で、このバウアーの理論は認知行動療法では、重要な理論らしい。
認知行動療法とは、認知に働きかけて気持ちを楽にする精神療法のことだ。
認知、つまり物の考え方や受け取り方ということだけど、そういうことについて全く無知だったと思う。
認知を変えることだけで悩みがなくなるなんて思わないけれど、こういうことを知っていると、苦しさから抜け出す選択肢が増える。
今はうつ状態のときに比べると、格段に生きやすくなっている。
あなたは今、機嫌よく過ごせていますか? それとも?