どうにもならないことで悩む習慣をやめる。『メンタルが強い人がやめた13の習慣』
<2017.11.24>
サイコセラピストだったエイミー・モーリンの『メンタルが強い人がやめた13の習慣』(エイミー・モーリン著)を、面白く読んだ。
自己啓発本にありがちな、新しく身に着けるべき良い習慣ではなく、私たちが時折はまり込んでしまう悪い習慣、そして、その悪い習慣をやめるとどんなことが人生に起きるかということが書かれている。
メンタルが強いというと、ロボットのように感情を抑えるという印象があるが、そうではなく自分の感情への意識を研ぎ澄ますこと、感情が思考と行動にどんな影響を及ぼすのかを読み取り、理解することだとエイミーは言う。
では、どんな悪い習慣を手放していくべきなのだろうか。
エイミーが掲げるのは、「自分を哀れむ習慣」「自分の力を手放す習慣」「現状維持の習慣」「どうにもならないことで悩む習慣」「みんなにいい顔をする習慣」「リスクを取らない習慣」「過去を引きずる習慣」「同じ過ちを繰り返す習慣」「人の成功に嫉妬する習慣」「一度の失敗でくじける習慣」「孤独を恐れる習慣」「自分は特別だと思う習慣」「すぐに結果を求める習慣」の13の習慣だ。
その中で、特に私が気になったのは、「どうにもならないことで悩む習慣」だ。
人生において、すべての状況やすべての人を思い通りすることはできない。けれど、思い通りにならないことを、何とかコントロールしようとして私たちは悩む。
何に自分の支配(統制)が及び、何に及ばないかを判断するのは、それぞれの人の考えで、それを心理学では、LOC(ローカス・オブ・コントロール/統制の所在)というそうだ。
LOC(物事支配する力)を外に置いている人は、人生は運不運に左右される、と考える。だから、「なるようになる、なるようにしかならない」と考えがちだ。
一方、LOCを内に置いている人は、自分の未来を100パーセント支配できる、と信じている。だから、人生の成功にも失敗にも、全責任を負う。『メンタルが強い人がやめた13の習慣』(エイミー・モーリン著)より
一般的には、LOCを内に置いて、努力すれば報われると考える方が理想的とされているが、すべてを思い通りにしようとすることには問題もある。
状況を支配するのに失敗するたび不安な気持ちに陥る、人をコントロールしようとして人間関係を損なう、状況を変えようとして膨大なエネルギーを使う、人生が思い通りにならないと、自分のせいだと考えてしまう。
人生をバランスよく生きるためには、LOCを内と外の両方に置いて、自分が何を支配できて何をできないのか、よく見極める必要があるというエイミーの言葉は、重い。
これを読んで、「人事を尽くして天命を待つ」ということわざを思い出した。やれるだけの努力をしたら、結果は天の意思に委ねるという意味のことわざだ。
努力は尊い。努力しないより、努力すれば自分が望む結果が現れる確率も高くなるだろう。
けれど、必ずしも努力で全ての結果はコントロールできない。運や、タイミングや不確定要素が絡んでくる。
例えば、仕事を一生懸命頑張ることはできるが、それを評価するかどうかは上司の判断になる。
全ての結果を自分が責任を持つというのは、苦しい考え方だと思う。
上司からの高評価を必ずもらおうとすると、いつまでも頑張り続けなければならないし、頑張ったからといってそれが報われるかはわからない。
このことわざは、LOCを内と外にバランスよく置くことの重要性を教えてくれる。
どうにもならないことにエネルギーを注ぐのではなく、自分が何とかできることを見極め、自分の影響が及ぼせることにエネルギーを注いでいきたいと思う。