人の話を聞かずに自分のことだけしゃべり続ける母
<2017.2.28>
ちょっとした用事があって、母が数日前から家に来ている。
母との確執については、これまでも何度か書いている。普段は離れて暮らしているから、それほど気になることはないが、一緒にいると自分の状態が下がるのが分かる。
母は人の話を聞かない。
一方的に自分の話したいことをただ話す。
会社から帰ってくると、まだ手も洗っていない、服も着替えていないうちに、矢継ぎ早に話が始まる。
「着替えて来るから待って」と言って部屋を出ても、まだ母の声が追いかけて来る。もう聞こえていないのにずっと話は続いていて、余程話したいことがあるのだと思う。
それは電話のときも同じで、実家に電話すると、延々母の一方的な話が続くので、何の為に電話したのかわからなくなるときがある。
ときどきあんまりひどくて、薄情だとは思うが、受話器を耳から離してほっておいている。それでも気づかないようだから、聞いているか聞いていないかはあまり重要ではないのだろう。
普段は父と二人暮らしなので寂しいのだろうと思ったりする。もちろんそれもあるだろうが、ずっと昔からこうなのだ。
私はおしゃべりな方ではなく、母との会話はもっぱら聞き役だ。
たまに私が話していると、話の途中で全然関係のない母の話が始まっている。
「私の話はもう終わったの?」と釈然としない気持ちが残る。いつも一方通行の会話。
子供の頃は色んなことを母に聞いてほしかったが、今、母に話したいことはあまりない。話しても聞いてもらえないのがわかっているし、伝えたいことも特にない。
これは母以外の人が相手でも同じで、話がうまいわけでもなく、取立てたエピソードもない私が特に話すことなんてないように感じてしまう。
何気ない日常会話が苦手なのは、この辺が原因だろう。ごく親しい人に対しては饒舌だったりするので、本当はおしゃべりなのかもしれない。
母に話を戻すと、話を聞かないで自分のことだけ話す傾向は、娘である私に対してだけかと思ってきた。
けれど父から、母の友人にも対しても同じようにしていることを聞かされた。
話を奪い取るようにして、自分の話をする母には父も違和感を持っているようだ。
話が途切れないから一見社交的に見えるが、その実快く思っていない人もいるんじゃないかと推測できる。
現に最近、友人と仲違いしたらしい。母は、自分の正当性を主張するが、私はその友人に同情的になる。
月並みな表現だが、会話はキャッチボールだろう。
人の話を遮って自分の話を始める行為には、相手に対する尊重も気遣いもない。悪気はないのだろうが、相手よりも自分の気持ちが優先している。
でも母に一番苛立つのは、私の話を聞かないことではなく、母が話す内容だ。
自分のことは棚上げし、人の足りない点ばかりをあげつらう。
矛先は私の場合もあるが、父や親戚やその他の人にも向けられる。自分の正しさがこだわる母には、ささいな非が許せない。
母以外の人が見たら、非でないことも母にとっては非になる。人として「当たり前」の水準が高い。結果、人の欠点ばかりに目がいく。
よく言えば向上心が強い。周囲もよりよく向上させなくては気が済まない。
そして思い通りにする為に、コントロールを始める。過干渉と無関心、相対するものが同居する不可思議な言動。
それを笑って許せない。
それでも今まで、母の行動について何か言うのを控えてきた。母の問題に介入するのは、私からのコントロールに思えて嫌だったのだ。
自分がされたくないことは人にしないという思い。というより、自分もしないからあなたもしないでほしいという願い。
それと育ててくれた人に感謝できない罪悪感から、口を噤んできた。
でもそうやって言わずに我慢していると、どんどん母を嫌いになる。
ふとした弾みで爆発して、傷つけた後味の悪さに自己嫌悪に陥る。
どうせ爆発してしまうなら、嫌だということをきちんと伝えた方がいいんじゃないだろうか。
私が嫌がっていることをわからないから、いつも同じことを繰り返す。多分母にはわからない。でも、わからなくていい。自分の素直な気持ちを口に出したい。
呼吸を整えて、なるべく母が受け取りやすい形で投げかけてみよう。