こんなに大人なのに満足に自分で服が買えない
<2017.1.14>
(「みんなの生きづらさ」/投稿者: わと さん)
私は服が買えない。
幼い頃から服屋が苦手だった。きらびやかな空間に置かれると早く出たくて堪らなくてよく機嫌が悪くなり母を困らせた。
しかし、高校生になりたての頃だったろうか。ついに服を自分で買った。友人に付いて行った服のセールのイベントだった。周りの同世代の子が着こなす流行のもの。デザインが気に入ったもの。数点を持ち帰る。
いざ、家に帰ると母が待っていた。「見せて」の一言。
昔から、私は秘密主義なところがあった。描いた絵、口ずさむ歌、なんでも誰にも明かしたくない欲求を持っていた。当然、買った服も見せたくない。「嫌だ」と言って部屋に逃げたが、母は部屋まで付いてきて「いいじゃん、見せて!」と続ける。
私にはわからなかった。なんで買った服を見せなければいけないのか。母もまたなんで買った服を見せたくないのかわからなかった。
1時間は見せる、見せないの問答が続き泣いて嫌がっても止まらず、ついに私が折れてビニール袋から服を取り出して並べて見せた。
「ふーん…」見定めるような目が苦手だ。
「合わせづらそうな服だね」好きを否定されるのが怖い。
結局、それだけ言われただけで終わったのだがトラウマとなって離れない。
その後もこっそりと服を買ってみたことはあったが着ると絶対に気付かれた。見定められて、合わせづらそうな服と言われた。または趣味じゃない、と言われる。母の趣味のために買っているわけではないが母の趣味な服を着ると安心する。ほっとする。一緒に買いに行って、母からこれいいんじゃない?と言われたものしか着れない。無意識に許可にすがっている。気に入られるために服を着ているのか?
合わせづらそうな服、趣味じゃない服と言われ続けてきたおかげで私はセンスがない人間だと思っている。母が選んだ服が周りに好評だったので尚更だ。そもそもセンスはないかもしれないが。
センスがない人間だから服を選ぶのが怖い。好きな服を着ればいいはずなのに周りの目が気になって買えない、着れない。いいかなと感じた服を可愛いと思うことに自信を持てない。また、これを着たとしてブスがとんだ服を着ていると蔑んだ目で見られている気がしてならない。通勤できない。
20代後半になった。こんなに大人なのに満足に自分で服が買えない。
今日はバイト帰りに服を見に行った。見ている服が春物か冬物かわからない。怖さを振り切って買ったとしても「これは春物だ」と淡々と告げられそうな予感がする。怖気付いて服屋をさった。なんて、本当に、情けない。
たぶん30代になれたとしても、きっと服が買えないのだろう。